2005/07/07 |
国民総医療費の話題その1
つつましい医療費で
政府は「骨太方針2005」(「経済財政運営と構造改革の基本方針2005」の別称)の重要課題として、社会保障も聖域ではないといって執拗なまでに医療費の伸び抑制を追求しています。高齢化と疾病の多様化、そして技術開発などによってゆっくりと右肩上がりを続ける医療費に対して技術への評価を下げ、さらに患者さんの負担増を強行して医療における公的支出を減らそうというねらいです。
そもそも骨太方針は7~800兆円、実は1000兆を越えているのではないか、とも指摘される途方もない国家累積赤字を是正して、財政をスリム化しようという意図から発しています。そこに至った真摯な反省の上であればスリム化も良いと思いますが、そのために医療を仇のごとく俎上に乗せるのは果たして理に叶っていることなのでしょうか。
これまでの日本における国民医療費とその成果をみますと、決して目に余る無駄などによって不効率をもたらしているとは思われません。それどころか総医療費は2001年の対GDP比7.7%で世界17番目、またドイツ、フランスの約6割というつつましい費用ですが、以下のような望ましい成果をあげている現実があります。
①世界最低レベルの乳児死亡率(2001年・ユニセフ)、
②192カ国中一位の平均寿命81.9才と健康寿命75.0才(2002年・WHO)
③医療の総合的達成度評価で191カ国中第一位(2000年・WHO)
※ちなみに米国の国民医療費の対GDP比は15.0%で世界最高(OECD各国平均8.6%)ですが、平均寿命は20位、健康寿命は23位です(2002年・OECDヘルスデータ)。
巷間指摘される公的、準公的団体における税利用の無駄などと異なり、日本の医療には明確な目的意識と自発性が維持されており、そのことが効率の鍵であったのかもしれません。我が国の医療費実体は、評価されこそすれ決してブレーキを掛けられるようなものではないとは言えないでしょうか。
次回は国が試みている国民医療費の総額管理について述べたいと思います。
2005・7・7 上越医師会 会長 |
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